目次
日本の年金制度の全体像
日本の年金制度の全体像について解説します。大きく分けると、①国民年金、②厚生年金、③ 任意の3つの仕組みから成り立っています。これが日本の年金制度は3階建てだと言われる理由です。しかし現場3階建ての部分は加入している人が少なく、多くの人が国民年金と厚生年金の2階建てに加入しているのが現状です。ざっくりと、国民年金は日本人全員が入っています。厚生年金は会社員が加入していると覚えておけばよいでしょう。3階建ての部分でメジャーなのは、確定拠出年金になります。確定拠出年金には企業型と個人型があり、確定拠出年金制度を企業が導入している場合は企業型に加入する必要があります。会社が確定拠出年金を用意していない場合個人で銀行などを通じて加入する必要があります。
公的年金制度の給付には、老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金など3種類の受け取れる給付金があります。障害年金は障害状態によって金額が変わります。また遺族年金は厚生年金受給資格者がなくなった場合遺族に支払われる給付金になります。日本の公的年金制度は、老後の生活資金だけではなく、経済的なダメージに対する保険の機能も備えています。
「公的年金」と聞くと、高齢になったときに受け取る老齢年金のイメージが強いですが公的年金制度には次のようなものもあります。
(1) | 重度の障害を負ってしまったときに受け取ることができる「障害年金」 |
(2) | 一家の大黒柱が亡くなってしまったときに残された遺族が受け取ることができる「遺族年金」 |
公的年金の給付を受けるためには、毎月の保険料を納付して、制度を支える義務をきちんと果たす必要があります。
経済的な理由で国民年金保険料を納めることが難しい場合には、所定の手続きを行えば保険料の納付免除や猶予制度を利用することができます。もし、毎月の保険料を納めず、保険料の納付免除や猶予制度も利用しなかった場合には、保険料未納となってしまい、重度の障害を負ったときや年を取ったときに、年金を全く受け取れなくなるおそれがあります。
老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金もある公的年金制度は、若い人にとっても関わりのある大事な制度です。年金は自分には関係ないこと、まだ先のことと思わず、正しい知識を身につけ、きちんと保険料を納めたり、手続きをしたりすることが重要です。
1回建部分〜国民年金制度の特徴〜
国民年金の保険料は、収入に関係なく16,540円(令和2年度)になります。20歳以上60歳未満の日本人全員が加入する制度です。日本の年金制度の土台となる部分といえます。ですから「基礎年金」と呼ばれています。ちなみに国民年金の保険料は毎年変更され、毎年値上がりしています。下の図を参照。
日本の少子高齢化が進む限り、国民年金保険料も増え続けると予想されます。。。
2回建部分〜厚生年金制度の特徴〜
続いて2階建て部分にあたる厚生年金について解説します。厚生年金は従業員や公務員等雇用されている人は原則全員加入している制度です。国民年金に上乗せして厚生年金に加入しますから、厚生年金のみ加入していると言う人はいません。また会社員の場合、給与明細には厚生年金保険料のみの記載ですが、国民年金の保険料も含まれた金額が控除されています。つまり会社員であれば国民年金と厚生年金の両方に原則的には加入してることになります。
厚生年金の保険料は、収入によって変わります。収入が高い方が厚生年金保険料の負担も大きくなります。具体的には標準報酬月額× 9.15%になります。標準報酬月額とは給与の総支給に近い数字です。また厚生年金保険料は会社が半分負担し、個人で残りの半分を負担すると言う形式(労使折半)になっていますから実際は標準報酬月額× 18.3%になります。会社が9.15%を支払い、個人で9.15%を支払うと言う形です。
2回建部分〜厚生年金保険料の仕組み〜
標準報酬月額とは、4月から6月期の手当てを含めた給料の総支給額の平均値になります。標準報酬月額がいくらかによって等級が決定します。各等級ごとに厚生年金保険料が決められています。特に等級表を添付しますので確認してください。
2020年9月から、新たに32等級が新設されました。これにより厚生年金保険料の上限が分かりました。自分がどこの等級にいるのか確認してみましょう。
公的年金制度の維持が難しい根拠
公的年金制度は、働いている現役世代の人たちから少しずつ保険料を集め、65歳以上の定年した人たちに支給する仕送り方式と言う形をとっています。ですから今現役世代の我々が収めている保険料は、直接年金受給者に配られている形式になっています(過去からの積立金もあります)。今日本は少子高齢化が進んでいますので、総人口に占める現役世代の割合がどんどん低下しています。一方で年金受給者は飛躍的に増えています。集めた保険料だけではとても賄えないほどの年金受給額がありますので根本的に制度を変えない限り維持する事は不可能な状況になっています。下記に日本の人口動態の推計値も含めて図を添付しますので確認してみてください。
日本の少子高齢化は深刻です。1955年には多くの働く世代が少しづつ保険料を納めていれば十分な年金支給額を確保できていました。2050年には総人口のうち65歳以上の占める割合が急増することが予想されます。
日本は世界で一番高齢化するというデータです。65歳以上の割合が40%を超えています。仕送り方式をとっている現行の制度では、人口構造的に維持不可能と言えます。今後大きく制度自体が変わる可能性が高いです。
日本の年金制度の今後の見通しについての知見
2019年8月27日に発表された、財政検証2019が公表されましたので解説していきます。
財政検証とは、平成16年に導入された公的年金制度の健全運営のために導入された制度です。
経済情勢の変化を踏まえて、様々な要素を検討して、年金財政を検証しています。
5年に一度行われており、前回は平成26年に行われました。
財政検証2019で設定されている「経済前提」とは
財政検証では、日本が将来経済的に良くなるのか、悪くなるのかなど様々なケースに分けて、年金の未来をシミュレーションされています。
まず重要なのは、経済前提という考え方です。
年金財政は日本経済が将来どうなるかによって、大きく変わります。
なぜなら、「今は払えるけど、10年後払えませんでした」では困るからです。
将来的に、年金財政が厳しそうなら今のうちから年金受給額を減額し始める必要があります。
そのように、日本経済が今後どのように推移するかによって今の年金水準や保険料は変えなければならないという話です。
経済前提とは、今後の日本がどのような経済情勢を推移するかをいくつかのケースに分けている前提です。
財政検証2019の経済前提は6つのケースで検証
財政検証2019では、6つの経済前提でシミュレーションされています。
下記に、6つのケースを財政検証レポートから抜粋します。
ケース1から6に分類されています。
詳細に見ていくと、非常に分かりにくいので、賃金上昇率に焦点を当ててみていきます。
賃金上昇率は、給料(ボーナス含む)のことなのでイメージしやすいと思います。
日本経済が成長して、給料が良くなっていくパターンや、全然変わらない或いは、減少するなどさまざまなケースが考えられます。
実際、2000年からの賃金推移を見てみると減少し続けています。
下の図を参照
実質賃金も名目賃金も2000年以降下がり続けています。
名目賃金とは
名目賃金とは、額面給料をイメージしてもらえば良いです。
一般的にイメージされる給料の額です。
単純に金額ベースで給料が増えたか減ったかを示すのが、名目賃金です。
ただ、名目賃金が増えたからと言って単純に生活が豊かになっているかどうかは分かりません。
例えば、物の値段が上昇した場合です。給料以上に物の値段が上がった場合、買える物の量は減ってしまいます。
毎年2回旅行に行っていた人が、1回しか行けなくなった場合実質貧しくなっていると言えます。
給料が増えても、それ以上に物価が上がれば実質的には貧乏になっています。
それを知るための指標が、「実質賃金」となります。
実質賃金とは
名目賃金を物価指数で割り戻した値です。
つまり、物価の影響を取り除いた本質的に生活が豊かになっているかどうかは実質賃金の方が正確に分かります。
もう一度2000年以降の名目賃金と実質賃金の推移を見てみます。
名目賃金も、実質賃金も下がり傾向にありますが、2007年〜2009年にかけて大幅に下降しています。
これはリーマンショックが大きな要因だと考えられます。
倒産した会社や、職を失った人などが増えたため名目も、実質も大きく下落しています。
また、2014年付近を見ると、名目賃金は横ばいにも関わらず、実質賃金が大きく下落し折れ線グラフが交差しています。
これは消費税増税(5%から8%への引き上げ)が大きく関係していると考えられます。
消費税増税は、強制的な物価の引き上げを起こします。
給料が変わらないにも関わらず、物価だけが上がれば当然実質賃金は下落していきます。
つまり、日本人はますます貧乏になっているということです。
財政検証の経済前提は、実質賃金でみている
なぜ名目賃金と実質賃金の解説をしたかというと、財政検証レポートの経済前提は実質賃金を指標にしているからです。
実質賃金についての理解がなければ、経済前提自体が理解できないためはじめに予備知識として解説しています。
もう一度財政検証2019年レポートの経済前提をみてみます。
実質賃金のところを赤枠で囲っています。
経済前提は、6つのケースを想定しています。
ケース1が一番日本経済が良かった場合、ケース6が一番悪い経済状態たった場合です。
実質賃金をみて見ると、ケース1の場合1.6%の上昇率で経済成長した場合を想定しています。
ケース6は、0.4%の上昇率で成長した場合で年金受給額がどうなるかをみています。
年金支給は所得代替率50%以上を目標としている
年金財政を運営指定く際、所得代替率50% 以上を維持することを目標としています。
財政検証2019レポートでは、将来の年金支給水準を「所得代替率」でシミュレーションしています。
財政検証レポートに出てくる重要な指標「所得代替率」とは
所得代替率は、財政検証にかんするニュースや報道でもよく出てくる言葉ですので押さえておいた方が良いでしょう。
所得代替率とは、下記の計算式で計算されています。
上の図は、前回の財政検証レポートに載っていた所得代替率の計算式です。
分母は、現役世代の平均手取額(ボーナス込み)で、分子は、年金受給額になります。
つまり、原型世代の手取りに対して、何割くらいの年金支給額を維持できるかを国は重要な指標として捉えているという事です。
今、国は最低でも所得代替率50%以上になるように年金財政を運営しようとしています。
現役世代の手捕りの半分あれば、なんとか生活は出来るでしょうということで、1つのLINEにしていると考えられます。
所得代替率における2つの問題点
所得代替率は、1つの指標としては有効ですが問題点もあります。
1つ目は、日本の賃金水準自体が低下した状態だと所得代替率50%でも実質生活できない可能性がある。
当然ですが、年金を現役世代の平均手取りの何割貰えるかという話ですから、所得代替率が50%以上であったとしても現役世代の手捕りが低く貧しい生活をしていれば、年金では生活できない可能性は十分あります。
今日本の賃金派名目も実質も下がり傾向です。
特に、実質賃金は下がり続けています。
この様な状態では所得代替率50%という考え方では、年金の給付水準が生活できないレベルに落ちることは考えられます。
もう1つは、分子の年金受給額が税込み金額(総額)であるということです。
これは意図しているのかどうか分かりませんが、分母の現役世代の給料は手取りなのに対して、分子の年金支給額は税込の総額になっています。
つまり、所得代替率が高めに出ることになります。
年金は雑所得という立派な所得にあたりますから、所得税がかかりますし、他にも介護保険料や健康保険料など控除されます。
正確に所得代替率を出すなら、年金受給額も手取りにするべきですが、なぜか年金のほうは総額になっています。
これでは、計算上は所得代替率50%以上になっていても、実際は50%以下になってしまう可能性があります。
財政検証2019レポートの結果を要約
財政検証では、所得代替率を指標としていますので、下記に将来の所得代替率をピックアップしています。
全ての結果を載せることは出来ませんので、ポイントだけ記載致します。
2019年は平均手取り金額は、35.7万円に対して、年金は22万円で、所得代替率は61.7%
という結果でした。1つの基準になると思います。
現役世代の手取り金額に対して、大体6割程度の年金給付水準であるということです。
それが、将来どうなるかというと下記の様になります。
ケース1で2046年に51.9%
ケース2で2046年に51.6%
ケース3で2047年に50.8%
ケース6では、2044年に50%以下になり、 2052年に積立金がなくなり完全賦課方式になる
いずれのケースでも所得大体率は低下しています。
年金給付水準は、これから数十年に渡って下がり続けることは確実です。
さらに、ケース6では2044年に積立金が枯渇します。
積立金とは、今まで貯めてきた余剰資金のことです。
完全賦課方式とは、現役世代の保険料をそのまま年金支給に当てるということです。
日本は2080年には65歳以上の割合が40%を超えると言われています。
つまり二人に一人は高齢者です。
現役世代1人当たり、1人の高齢者の生活費を全て支給するのは現実的には不可能です。
つまり、完全賦課方式(仕送り方式)では年金は維持出来ません。
なにか回避手段を講じることになります。
例えば、年金給付開始年齢の引き上げです。
僕は確実に70歳、75歳と支給開始は遅れていくと考えています。
それほど、日本の年金財政は深刻です。
とても維持できるレベルではありません。
財政検証2019レポートを簡単に解説してきましたが、日本の年金制度は今後大きく変わることが予想されます。
それぞれが、自己防衛をして将来生活に困らないためにも早めの情報収集が必要です。
770人以上が月5万円から100万円以上の安定収入を
ネットだけで得られるようになり、
120人以上が海外と日本との2拠点生活を実現しています。
コメントフォーム